Fate/Grand Orderにおける『マハーバーラタ』のアルジュナについて(雑記)
twitterでの雑語り
ジャヤンタに攻撃した時を見るに、ラーマって武器の回収法知らない...?
— ここのえ (@Gtomo427) March 6, 2019
ヴィシュヴァーミトラに回収法習ってたっけ
武器を回収できる(まだ言語化できないけど意味あるもの)アルジュナはインド神話オンリーワンなのでは...?#この方向性で何か一本
アルジュナはブラフマーシラーストラ(梵天の頭の武器ブラフマー・シラス・アストラ)でアシュヴァッタ―マンの其れを相殺した時に、聖仙から撤回するよう求められて回収する訳だが、アシュヴァッタ―マンはできない。
むしろ回収できるアルジュナの卓越した聖性への称賛が原典では行われる。
アルジュナ以上の聖性をもつラーマはというと、ジャヤンタ神へ放ったブラフマーストラを「止められないから、せめて的を小さくしろ」ということで眼を潰す。
アストラ(一般に神の武器)とは召喚される物であり、呪物である。
加持される言葉であり魔力であるように『マハーバーラタ』全編を含めて思える。
放たれた武器=口に出した宣言、それは基本的に何があっても回収=撤回することはできないのだ。
パラシュラーマの愛弟子カルナへの「お前は必要な時、武器の術を忘れるだろう」という呪いは撤回できなかったが、代わりに宿敵アルジュナのガーンデーヴァ神弓に匹敵する弓と、ブラフマーストラの代わりの武器の術を与えた。
ウルヴァシーのアルジュナへの不能の呪いは、インドラの取り成しで一年だけという条件付きの期間を加えられた。
ここで上記のアルジュナの特異性が挙げられる。
アルジュナの性質として、自身の道徳正義ではなくその場の現実主義的正義を優先することができる
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
例としてはウルーピー、ユディ兄の侮辱、ドローナ殺し等#一般的に前言撤回は許されないはず
ダルマは常に正しいとは限らないと再三、クリシュナ(物語の世界観・第三者的視界を持つ者)が言う点
アルジュナは前言撤回が物語的に許される。
『ラーマーヤナ』のラーマはそれが出来ずに愛妻シータを失ったのに。
カルナは自らの意思を通す武器を一度しか使えない。アシュヴァッターマンも同様
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
彼らは周囲の人(主にクリシュナ=世界観への理解がある人)の説得に応じない#基本的に徹底抗戦であり妥協できない性格を有する
アルジュナの武器を回収できる能力はその精神性(正しさ)に結びついている#ブラフマーシラス参照
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
一方でビーシュマ殺しの責任で一度死ぬが別の因果(ウルーピーへの行為の正しさ...正しさ?)で蘇る。
ドローナ殺しの責任で一族郎党は一人を残して死滅する
結論は既に心の中で出ているんだけど、これは古代インド人が何を考えてそうしたのかが不明なんで断言できないんだが。#まぁ神話形式で表現されているが社会道徳は一般的な正義とイコールではないよねっていう
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
自身の信念を貫き通す、という意味で、一般的な正義。
構成される要素(人民)によって価値観が変動する、社会道徳の正義。
死んだビーシュマやカルナ達に語り部が託したのは前者。
ダルマを絶対視した者達は現実・社会との歪み(変動・衝突・反発)によって粛清される
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
ex)クリシュナ「私がすでに滅ぼしている」
ビーシュマは貞操を守り続けた。これは最初は正しかったがビーシュマが置かれている状況が変動した時には正しくはなかった。結果的に殺される原因を見過ごした
アルジュナの正しさは神話的権威から保証されるものだが、一方でビーシュマ以下達は英雄的名誉を得る。戦没者がインドラの国(天国)へ行く名誉。
— ここのえ (@Gtomo427) March 8, 2019
苦しくても生きて故国を繁栄させるか、潔く格好良く死ぬかの二択。どちらに重きを置くか#ここにアルジュナの選択の余地はなかったけどもやり遂げた
アルジュナの正義観
それで型月アルジュナの、原典アルジュナの解釈はどうしたのかという話になるんだ。
型月アルジュナ、相手を見透かすカルナから「正義が形になったような男」とか言われおり、マテリアルでは土壇場では一般的に卑怯と言われる手段も辞さない人物であるとされる#一見矛盾している
— ここのえ (@Gtomo427) March 12, 2019
カルナの言う正義が行為によって齎される結果の正しさなら矛盾しねーな?#願望機ジーク族って奴はよぉ
カルナの言う正義は思想という意味での「正義が形に...」ではない、正義の味方なんじゃないか。
— ここのえ (@Gtomo427) March 12, 2019
生前アルトリアは正しさから村を焼く女だったし、他人の正しさの為に自分を棄てたのがジークフリート#これは生前インドが語られないと決定稿にはならないんだけども
型月の正義が多数派なのは抑止力から
頼まれたから女性にすまないした(隠語)ジークフリートとアルジュナが似ているっていうのは内心では悪いと思っていても無私を努めるとかそういうのかな?とも思う。
型月の正義が抑止力などからも多数派の存続であり、少数派を切り捨てる戦法なのはエミヤの話でもあるし
— ここのえ (@Gtomo427) March 12, 2019
やっぱりアルジュナの正義ってそういうことだろう。
その容赦ない手段=卑怯と呼ばれる手段で切り捨てられる、自身の悪性に耐えられない一般市民的な普通メンタルを持つ超人が型月アルジュナー!
パーシュパタの即死の意味
っていうのとは別に、元々記事にしようとしたのはFGOの即死効果、意味なくない?という話。
即死特化のニトクリスしか息してない。
ボス・サーヴァントには効果ないし、シャドウサーヴァントは普通に倒せるしなあ。
追い打ちをかけるように即死無効化がパッシブ(常時発動)で来やがる。
単独顕現
単体で現世に現れるスキル。単独行動のウルトラ上位版。本来はビーストしか持ち得ぬ特性。このスキルは“既にどの時空にも存在する”在り方を示しているため、時間旅行を用いたタイムパラドクス等の時間操作系の攻撃を無効にするばかりか、あらゆる即死系攻撃をキャンセルする。また、このスキルを持つ者は特異点による人理焼却も、○○○○○による人理編纂にも影響を受けず、条件がそろってさえいれば顕現する。セイバーの両儀式は何故かこのスキルを所持している。このスキルを持つものは即ち―――。ティアマトは一度顕現してしまえば七日に渡りインド洋を塗り替える。顕現してからは休む事なく魔獣たちを生み出し、人類を喰い尽くす。反面、ビーストⅡ本体は海そのものなので陸地にあがる事はできない。人類掃討は子供である魔獣たちの仕事となる。マーリンの場合、どのような未来においても死亡しないため、英霊として召喚されることはない。彼がサーヴァントとして仕えるのは個人的な欲望の発散、ありていにいえば趣味である。彼はその趣味を実現させるため、ある特殊クラス(ビースト)しか持ち得ないこのスキルを自力で獲得し、サーヴァントとして召喚されるフリをしている。アルターエゴの殺生院キアラは、アルターエゴに変化した事で自重し、自己封印している。ただし、単独顕現が持つ「即死耐性」「魅了耐性」は備えている。『Grand Order』では「自身のクリティカル威力を少しアップ&即死耐性アップ&精神異常耐性アップ」という効果のパッシブスキル。
即死耐性概念の話で、この即死はパーシュパタ型を指していると思われる。
パーシュパタ型とは以下の二つ。
破壊神の手翳(パーシュパタ)
ランク:A+
種別:対人宝具
レンジ:1~100
最大捕捉:1000人
由来:破壊神シヴァがアルジュナに授けた鏃。神代の神造兵装。ヒンドゥー教における三大神、破壊と創造を司るシヴァから与えられた武器。周囲の人間を纏めて鏖殺するのではなく、レンジ内の敵一人一人に対して判定を行い、失敗した者を解脱、即ち即死させる。この宝具が対「人」と分類されているのはそういった性質から来ている。神性が高ければ高いほど解脱の確率は大きくなるが、逆に反英雄と呼ばれるサーヴァント達は解脱の確率が低くなる。対象が人でなくとも相当の破壊力を有しているようで、『Fate/Grand Order』においては幕間の物語「神弓の真価」では森を吹っ飛ばして更地にしてしまい、さらに第五章にて捨て身で放った際には魔神柱28柱の集合体であるクラン・カラティンを纏めて吹き飛ばすほどの威力を見せている。また『Fate/EXTELLA LINK』では「機動聖都・東門」「機動聖都・西門」「強襲!機動聖都」の3つのステージで、手の届かない孤立した空間にある巨大な防衛砲台をセクター諸共に消し飛ばしているほか、カルナ戦においてはまるでビームのように前方に向かって放つ使い方も見せている。『Fate/Grand Order』では「神性領域拡大、空間固定……」から始まる詠唱で発動範囲や時間を設定し、承認が終わると手元に光球が出現。これを指先を軽く動かすようにして天に投げ上げる。投げ上げられた光球は敵頭上に移動すると解けて一気に広がり、同時に敵全体を飲み込んで圧し潰すといったような演出になっている。『Fate/EXTELLA LINK』では演出が途中から異なり、こちらでは投げた光球が大気圏を突き抜けて宇宙空間に到達し、そこで無数の光筋となって放出され大気圏に再突入。光の筋は敵一体一体に向かって流星のように落ちていき、地上に到達すると天に巻き上げながら前進し、やがてすべてを飲み込んでゆく演出となっている。『Fate/Grand Order』では「敵全体に強力な攻撃&敵全体に低確率で即死&さらに〔神性〕特性の相手に対して確率で即死&敵全体の防御力ダウン」という効果のBuster属性の宝具。『Fate/EXTELLA LINK』では即死効果がオミットされている。
終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)
ランク:B
種別:対軍宝具
レンジ:0~4
最大捕捉:100人
完全に同期した自分たち───複数のワルキューレたちが一堂に集い、ヴァルハラへと至る勇者の魂を導くための機能のすべてをより合わせ、手にした宝具『偽・大神宣言』を一斉に投げつける。対象に槍の投擲ダメージを与えると同時に、効果範囲に一種の結界を展開。あらゆる清浄な魂を慈しみ、同時に、正しき生命ならざる存在を否定する。サーヴァントや使い魔といった存在や、術式、幻想種、吸血種、等々の魔術や魔力に類する存在を退散させる空間を作り出すのである(抵抗判定に失敗した個体を退散させる)。『Grand Order』では「自身に必中状態を付与&敵全体に強力な攻撃&〔魔性〕属性の相手に対して確率で即死」という効果のQuick宝具。
この二つである。
絶剱・無穹三段(ぜっけん・むきゅうさんだん)
ランク:A
種別:対界宝具無量、無碍、無辺、三光束ねて無穹と成す。光り輝く黒光を放つ魔神・沖田総司必殺の魔剣。抑止力としての奥義であるこの技は、本来存在しえないもの、してはいけないものすら強制的に世界から退去・消滅させる事が可能。たまに技の名前を忘れて「なんかすごいビーム!」などと言って放つ事もあるが、ちゃんと威力は発揮される。
『Grand Order』では「敵全体に強力な攻撃&Buster耐性をダウン」という効果のBuster宝具。
個人的には、無穹三段も「即死がゲーム的に意味がないことを悟った為に、有用な効果に変えた」即死型であると思う。FGO作ってる奴らはそういう事するもんな(圧倒的信頼感のなさ)。
たぶん意図としては存在強度の低下だよね(防御力ダウンとかも)
それで肝心の即死効果をもつ宝具はというと、けっこうあるのだけど。
無垢識・空の境界、憤怒の波濤、破壊神の手翳、貫き穿つ死翔の槍、終末幻想・少女降臨、神槍无二打、刺し穿つ死棘の槍、死告天使、妄想心音などなど……
オーバーキル系(物理・概念的に生存に必要な器官を確実に壊す効果)とターン・アンデッド系(浄化したりで強制昇天をもたらす効果。別世界逝き含む)の二つがあると考えられる。
で、単独顕現(どの時空にも存在する力)と物理的即死って関係性がなくない?
普通に倒されたら消滅しとるやんけっていう。
パーシュパタ型を警戒する理由は分かる。ティアマトとか単独顕現なければ解脱死されちゃうもんな。同じパーシュパタ型の五百羅漢補陀落渡海みたいに浄土へ連れて行かれ成仏(こいつ設定では即死なのに即死効果ないのな)される。
破壊神の手翳とは?
これは漢字の意味。
手の翳(かげ)と破壊神の武器(パーシュパタ、獣の主パシュパティの武器アストラ)という言葉が最初は結び付かなかった。
ブラックホールじゃないんだ?という先入観があった。
「(前略)私はクリシュナとともに、動不動のものを含む三界を、神々もろとも、過去と現在と未来にわたって、一瞬のうちに滅ぼすことができると思う。あの山岳民との戦いにおいて、パシュパティが私に与えた恐ろしい偉大な武器が私のもとにある。宇宙紀の終末にパシュパティが万物を滅ぼすために用いるあの武器が私のもとにあるのだ。(後略)」
原典訳マハーバーラタ5 上村勝彦 訳
手の翳というと、上位存在が眼下にいる有象無象を握りつぶす的な。そんな意味合いを感じる。自分の頭の上に巨大な手がいるのを想像してください。
アーケードというアルジュナの解像度を上げる媒体(解像度=掘り下げ)が出た当時、twitterのインドのガチ勢が「満月から新月までの、欠けていく月のことをクリシュナ・パクシャと呼ぶ」と書いた。
別の方向での翳り!
集合知!
かかぽさんには助かってます(アルジュナの女体化の可能性について文献的根拠を提示して下さったのには感謝しかない…)!
月の翳り。
シヴァ神というとパラシュラーマに傷付けられた三日月の傷(カンダパラシュ)とか、羅刹の王ラーヴァナに与えた神剣チャンドラハス(月の笑み)とか。
結構シヴァと月は関係性が深い。チャンドラ神、ソーマ神ェ……
で、俺が思った翳りは、半月ではなくて月蝕なんですね。
ラーフとか関係なくその方が格好良いからなんですが。
だけど星の翳りっていう路線がありなのは、『ロード・エルメロイII世の事件簿4 case.魔眼蒐集列車(上)』で、素粒子の振る舞いから踊りの王(ナタラージャ)、ブラックホールを宙の瞳という魔眼に例え、大いなる虚無(マハーカーラ)と表現したこと。
俺は基本的に資料を繋ぎ合わせてこじ付け合戦するの好きなんで。
翳り。つまり生命が終わる直前の状態。
月はその光を失い、恒星はブラックホールと化すようなもの。
破壊の神は星を閉鎖すシステムなんですよきっと。
でも一番好きなパーシュパタの形状はテラリンクで出たようなエネルギー・ボールでも、かめはめ波でもなくて。
このタペストリーの蓮のようなものです俺は。タペストリー持ってないけど。
この方向性で行って欲しかったな(二部cmバーサーカーはガラス玉だし)
Fate/Another Labyrinth➆
【出典】マハーバーラタ、バーガヴァタ・プラーナ
【CLASS】セイバー
【マスター】???
【真名】パリクシット
【性別】男
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力A
耐久B
敏捷B
魔力C
幸運A++
宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
騎乗:A+
父祖たちが半神ガンダルヴァ族の王アンガーラパルナから百頭ずつ与えられた、ガンダルヴァ族の馬の一頭シュヴェータに跨る。その馬は思考と同じ速度で飛んで行けて、また疲れることも知らない。色は自在に変わり、好きな時に呼び出せるという。
【固有スキル】
生存の恩寵:EX
クリシュナ神がパリクシットに示した恩寵。まだ胎児の時に破壊神の化身アシュヴァッターマンの憤怒により死滅した彼を蘇らせ出生させた。自身の耐久値を超えた時、その干渉そのものを消滅させる。ただし毒によるスリップダメージや、自身が死を選んだ時には適応されない。
天帝のカリスマ:A
神々の王インドラの息子と、ヴィシュヌの部分的化身(アムシャ、あるいはヨーガマーヤーとも)の孫。月神チャンドラの息子神ヴァルチャスの化身の子供。その血統と偉業をもって神性を宿す威光、カリスマ性。
パーンドゥの五兄弟である法神ダルマの子ユディシュティラ、風神ヴァーユの子ビーマ、雷神・軍神・神々の王インドラの子アルジュナ、医神アシュヴィン双神の子ナクラとサハデーヴァは皆が神々の王に相応しい光輝を宿して誕生した。その彼らの特性を引き継ぐ統一王サムラートとして発揮される皇帝特権や神性、カリスマとの複合スキル。
五兄弟は古代アーリア人の三階級(神官・戦士・庶民)を象徴しており、それ故に文明が必要としている技能を全て備えていると言っても過言ではない。そして、その玉座を受け継ぐ者ならば。
【宝具】
ランク:EX 種別:対悪宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
悪に耽るアスラ神族の一派ダーナヴァを粛清した、秩序を取り戻す、悪に抵抗するための宝具、破壊神の利剣アシの真名解放。
自らの周囲に権能クラスの超抜スキル、対邪悪を有した、悪を退去させる聖なる空間を成立させる防御的展開が本来の用途だが、空間展開をビーム状にすることで攻撃性を有したものになる。触れた対象はその場から放逐(ワールドパージ)、世界からの解脱、すなわち即死が行われる。
アーリア系神話において世界の終わりに滅ぼされるという大悪、インド神話においては最悪の羅刹カリと呼ばれる。パリクシットを前にして命乞いするカリを前にし慈悲深くも賭博・酒・女性や悪女・殺生・黄金(偽り・迷い・激情や色欲・狂気・敵意)という居場所をいることを許したという。
※1
ランク:A 種別:対星宝具 レンジ:1~999 最大捕捉:1000
dark mix
末法に現れるという悪魔カリとの融合、すなわち魔人化。
世界を別の未来、生命の途絶えた星に書き換える異界常識・固有結果。
神剣アシによって常に悪魔祓いと、悪魔憑きによる自己改造が同時に作用している状態になっているため肉体への負荷が非常に高い。
「生滅の輪から解き放たれて彼岸に至れ――――」
ある場所で行われた亜種聖杯戦争において召喚された最後のサーヴァント。
幼いながら尊大な少年パリクシットと、背の高い卑屈な青年カリの二人組。
祖父アルジュナもまたクル族に繁栄をもたらす予言の子だが、それはパリークシットもそうであった。
クル族のみならずインド亜大陸の征服者のバラタ族の最上なる者になることは運命付けられていた。
「イクシュヴァークのように自国民を守り、ラーマ王子のようにブラーフマナに帰依し自分の言葉に忠実で、シビ王のように保護を求める者には寛大で、月王族のバラタのように祭祀者と国民の名声を広め、弓取りの長として二人のアルジュナ(カールタヴィーリヤ・アルジュナと、自らの祖父アルジュナ)に匹敵し、火のように難攻不落で、海のように征服しがたき者となり、獣の王である獅子のように雄々しく、ヒマーラヤのように人々から頼られ、大地のように不滅で、両親のように忍耐強く、ブラフマー神のように心平静で、シヴァ神のように慈悲深く、ヴィシュヌ神のように全ての生き物の支えとなり、優れた徳と気高さにおいてクリシュナの足跡に従い、ランティデーヴァ王のように寛大で、ヤヤーティのように敬虔で、バリ王のように堅固で、プラフラーダのようにクリシュナへの信仰心があり、
多くの馬供犠祭(アシュヴァメーダ)を行い、年長者をよく敬い、王仙の一族の始祖となり、法(ダルマ)を逸れた者の処罰者となり、母なる大地とダルマの為にカリをも制圧するであろう。呪いでタクシャカによって死ぬことを知ると全ての執着を捨てハリ(クリシュナのこと)の御足に庇護を求めるだろう。聖仙シュカの教えによりアートマンを悟るやガンガーの岸辺で肉体を捨て、不畏の心境に至るだろう」
悪を誅戮した戦士アルジュナの後継機、悪を征服する王者パリークシットその人。
ただ唯一、悪と共に在れる聖別された英雄。
※1
神剣アシ
ブラフマー・ヴァルタとはサラスワティー河とドリシャドワティ河との間の神聖な地域であるブラフマーの土地のこと。
ブラフマー神が造り上げ、シヴァ神が振るうことで阿修羅ダーナヴァ一族を討滅した後はヴィシュヌ神に手渡され、更にマリーチ仙から全ての大聖仙、インドラ、世界守護神、人類始祖マヌ、クシュパ、イクシュヴァーク、プルーラヴァス、アーユス、ナフシャ、ヤヤーティ、プール、アムリタラヤス、ブーミシャヤ、月王族のバーラタ、アイラヴィラ、ドゥンドゥマーラ、カーンボージャ、ムチュクンダ、マルッタ、ライヴァタ、ユヴァナーシュヴァ、ラグ、ハリナシュヴァ、スナカ、ウシーナラ、ボージャ、ヤドゥ、シビ王、プラタルダナ、アシュタカ、プリシャダシュヴァ、バラドヴァージャ、ドローナ、軍師クリパからパーンドゥの五兄弟に伝わり、パリクシットの佩刀として受け継がれる。
※2
抑えがいなくなったカリはその“この世全ての悪”と言える性質を最大限に増長させていく。創造神ブラフマーの曾孫であり、神をも滅ぼすハリーハラの毒をその身とし、ヴィシュヌ神の女体化化身モーヒニーの羅刹粛清からは人間の心に入ることで逃れたカリは、カルキに倒されるまで因果的に不死身である。精神と物質を侵し、朽ちさせ、腐らせ、病ませながら世界の終わりまで広がる邪悪そのもの。
伝承においてパリクシット存命中には律せられていたが亡くなった途端に、野火のごとく他の場所に移り全世界の長さと幅を超えて影響力を拡大していったという。
Fate/Another Labyrinth⑥
【出典】イリアス、アエネーイス
【CLASS】ランサー
【マスター】カサンドラ・ピュラ
【真名】アイネアス
【性別】?
【身長・体重】168cm・56kg
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力:B
耐久:A
敏捷:B
魔力:C
幸運:A++
宝具:A+
【クラス別スキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
神性:A
美の女神アプロディーテ(ローマではウェヌスとも)の息子、半神。後に彼女によって神の座へと上げられたという。異能ボーナスは交渉判定の向上と魅了の無効化。
【固有スキル】
再行動:A
即座に次の行動に移行するスキル。精神干渉や物理的影響をAランク分無視して、時に自身の行動が終わっていたとしても、相手の行動時にもカウンターや位置移動、二回行動を可能とする。彼に与えられた神々の加護。稀に彼の能力を超えた行為を成させる。
美の顕現:B
美の女神としての恐るべきカリスマ性。他者を惹き付ける力。強力な誘惑を主体とした複合スキル。
ウェヌスの帯:EX
ケストス・ヒマス。美の女神アプロディーテの宝具。足の不治の傷を停めるために巻かれた、魅了による麻痺をもたらす帯。空間そのものとその中の全ての事象を絶対停止させる。時間停止にも等しく、この停止した時間の中で動けるのはヴァイオレットだけで、例外は存在しない。なお、対象となった空間内の人間は意識があるため、自分の身に何が起きているのかを把握する事だけは出来る。
愛と憧れ、欲望が秘められており、自分の魅力を増し神や人の心を征服することができる。愛欲・慕情・口説きといった様々な愛の力が仕込まれている。着用者の魅力を著しく高め、その姿を見た者の心に強烈な恋を引き起こす。
【宝具】
ランク:A+ 種別:結界宝具(対国) レンジ:0~3 最大捕捉:1人
鍛冶神ヘパイストスが造り上げしアキレウスの盾と対をなす神造宝具。未来を保証する異なる時間を内包した七層時計。未来視の窮極として存在の寿命を視て押し付ける直死の魔眼と類似した事象や、空間・対象変動、無限加速・停滞の同時使用などが可能。本来の用途としては未来の時間軸を観測する預言の宝具。400年以上も後のローマの栄光が描かれた神盾。
攻撃を受け止めるのではなく、時間を巻き戻したり別時間に送ることで無効化する類。
ランク:EX 種別:対城 レンジ:10~1000 最大捕捉:1個
トロイの街から失われ、ローマに伝来したパラディオン。
パラディオンとはギリシャ神話においてトロイの街を守護していた女神アテナの像を意味する。 「この像がある限りトロイは陥落しない」と謳われていたが、トロイア戦争では敵軍の策略によってトロイは陥落しまっている。 都市を守るとされ強力無比だったたパラディオンは、その実は失われれば都市は滅びるという運命を示したものであった。
城門をこえて都市の中央まで飛来・着弾し都市を破壊するという本来の運用と上記の由来からか劇中では『対籠城宝具』とも呼ばれている。
鍛冶神ヘパイストス直々に製作した槍でもって逆転したパラディオンの概念を解き放つ。
カサンドラ・ピュラ
魔術系統:結界、呪詛
魔術回路・質:B
魔術回路・量:C
魔術回路・編成:異常
起源:献身
正道、邪道、異端。
魔術師の歩む道というのはおよそ大別して三つあるように、私は思う。
一つはパルジファルのように、真っ当に魔術刻印を受け継いで正道を行く者。
一つはクリアのように、本来の魔術とは真逆の方向性をもつ邪道を行く者。
一つは私、カサンドラのように突然変異的に研鑽とは別種の魔術を所有する者。
カサンドラ・ピュラ。
魔術協会の三大部門の一角、時計塔が呪詛科に所属する魔術師。
防衛魔術の異端とも言える。極北とも言える。
カテゴリー的には呪術の一種である護符の魔術とされる。
「わざわざ貴族主義の
「彼女は逸材だよ、クリア」
「ふうん?」
「魔術世界には往々にして血統による研鑽を一代で飛び越える天才、異才というものが存在する――冠位の蒼崎橙子なんか分かりやすい例だが――カサンドラはそれだ」
「あそこまで目立つようなら、時計塔で末席な俺でも名前ぐらいは知っているはずだが」
「クリアは防衛魔術を知っているかい?」
「そりゃあ、な。全体基礎で習う類感魔術・感染魔術を防ぐ魔術の一つだ」
「カサンドラの使う魔術というのはその初歩中の初歩の魔術――――」
防衛魔術。
呪詛や魔力によって損なわれる事象を弾く魔術。自身の健康状態を防衛・維持すると考えた時、その前提について問わなければならない。
時間の遷移による老化すらも防ぐべき害悪であった場合、どうやって身を守るのか。
カサンドラの潜在的な魔術回路が編み上げた方法が、自身の自然状態の情報を、傷ついた現在の自分にコピー&ペーストするやり方。
限定的な時間旅行に近しい。
たった一代でありながら魔法一歩手前の大魔術を可能とする、その才能。
異端、に他ならない。
「で、そのカサンドラとやらはどこにいるんだ? 一級講師のお前の内弟子なんだろ」
「彼女はペルシアのある地方で行われている亜種聖杯戦争に参戦しているよ」
「ペルシア?」
「これが、これがかつて鍛冶神ヘパイストスが造り上げた神造宝具」
アキレウスが生きた世界の全てを表した大盾。
全面に渡って凄まじいまでの精緻な意匠が施されているこれは、真名解放することで盾に刻み込まれた極小の世界が展開され、一つの“世界そのもの”で攻撃を防ぐ結界宝具とさえ成るという。
それがこの亜種聖杯戦争が行われている迷宮の、核をなす“聖杯”に他ならなかった。
迷宮。
かつてのギリシアの土地か、それとも軍勢が踏みしめた数多の国の光景か。
盾に刻まれた世界が閉じた迷宮を語り上げる。
「死骸ぺウケスタス! 敗北を認めなさい。貴方の王は滅んだ!」
アキレウスの盾、世界という魔力炉心を内包する宝具によって何度も繰り返される亜種聖杯戦争の末に召喚された大本命、ライダー・征服王イスカンダルをランサーは消滅させた。
倒したのだ。
「さあ、優勝者には聖杯を。かつてトロイにて征服王が賜りしアキレウスの盾。大王がそれを貴方に託して盾持ちにしたけれど。もう貴方の全ては滅んだのだから」
『黙れ。まだ、征服王の道行きは終わらぬ』
「貴方の姿をしたサーヴァントに会ったわ。シールダー。征服王と共に夢見た世界に招かれる貴方。死骸に宿った怨念の呪いは正しく理に還らなければ。世界に染み付いたままではいけない」
『真名解放、
王の軍勢が吼える。盾に刻まれた世界に写された残響が叫ぶ。
世界をもって防ぐものが、世界をもって攻めるものへと変わった瞬間だった。
霊墓アルビオンから採掘される呪物などとは比べ物にならない、魔術礼装としての加工すら無意味な、数少ない現存する宝具。
「どうなさるおつもりですか、パルジファル」
「用途としては簡単だ。見立ての魔術、つまり類感呪術さ」
抑止力が発動者となる降霊儀式・英霊召喚。
これを極小とはいえ世界、盾の魔力炉心と世界という概念を相互作用させる。
「おそらくぺウケスタスも同じ方法を使ったのだろうね。迷宮を造ったのは鏡像結界に由来するものだ。盾の
雑記
U.C.0169前後
ジャンク屋五人衆
体力チートって超集中力が持続できる
ボクシング、ラウンドは短いけどめちゃくちゃ疲れるってのはそういう
せっかくだから機体は合体したい
木星船団信用できねえ→自分たちで長距離航行用輸送船を運用
インビジブル・チタニウムって実質フォトニック結晶だから量子コンピュータ
フレームからフォトン・バリアなら装甲は機体そのものの剛性補完で最小限
小型モビルスーツの時代か転換期
宇宙戦国時代、宇宙海賊多め
ビームフォージ(メガ粒子プラズマの自己組織化を利用したもの。硬質残光)
フォーキャスター(量子的未来観測。タルシス)
タルシス(アルドノア・ゼロ)の未来予知が時間跳躍的なものってことは未来から情報を受け取れる→未来からエネルギーを引っ張ってこれる→蛇口の大きさはともかく無限エネルギーっぽいよね
データを過去に送り続けることで体感時間の鈍化とか死んだ所からのリスポーン
エルピス
インドラ・ジット(G-it)
G‐アウラ(Gの本質)
Fate/Another Labyrinth⑤
【出典】史実
【CLASS】フォーリナー
【マスター】パルジファル・ハイネ・ソフィアリ
【真名】ジェフティメス(トトメス三世)
【性別】男
【身長・体重】169cm・64kg
【属性】秩序・悪
【ステータス】
筋力:B
耐久:C
敏捷:C
魔力:A
幸運:A
宝具:EX
【クラス別スキル】
領域外の生命:EX
対魔力:B
詠唱が三節以下の魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法であっても殆どダメージを受けない。
騎乗:A+
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。A+ランクでは竜種を除くすべての獣、乗り物を乗りこなすことができる。
神性:B+
神霊適性を有する。ファラオとは古代エジプトの民を統べ地に君臨する支配者であると同時に、神へと至る者である。王である以上に神なのである。ファラオは時代等によっていずれの神に連なる者か変化するが、彼は宰相レフミーラーの墓碑銘やヌビアにおいてトート神の化身とされている。神性の異能ボーナスはINT値とMAG値の上昇。魔術に対する適性が上がる。
【固有スキル】
凱旋のカリスマ:A
ファラオと共に従軍した書記の記録に基づいた複合弓の使用、死者数などの記録が残る歴史上最古の戦いであるメギドの戦いでの勝利や、軍事遠征を繰り返し、エジプト王国史上最大の版図を築き上げた功績。故にトトメス三世はエジプトのナポレオンと呼ばれている。現界時にはスフィンクスたち神獣兵団の能力を向上させる。
皇帝特権:EX
本来所有していないスキルを短期間獲得することができる。Aランク以上であるため、肉体面の負荷(神性など)をも獲得する。叔母ハトシェプストの記録抹殺刑を行ったことで規格外評価となっている。
無貌の神:A
人間を試すように滅びに追い込む、ある神の反響。トトメス三世と同一視されているトート神はある創作神話にてある神の化身とされているが故に、このスキルを有している。虚数空間の境界面をより確かなものとし、『事実の裏側(シャドウフェイズ)』に落とす固有結界。世界が覆われた時、すべての時間は凍結する。
【宝具】
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~800 最大捕捉:1000
将軍ジェフティの『ヨッパ奪取の物語』において語られる、トトメス三世の一族に代々伝わる、いかなる人物・物となることができる神々の祝福を受けた神杖“
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:300
モント・スフィンクス。一般的な対軍宝具をもつA級サーヴァントに匹敵する。
天空神ホルスの化身であり、荒ぶる炎と風の顕現として人々から恐れられる、古代エジプトに伝わる伝説の人面獅身獣。その中でも戦闘に優れた天空神ホルスの顔をもつ軍種モントを使役する。古代エジプトにおいては戦車を牽引するために調教された。しかしその気性の荒さから飼い馴らせられたファラオは多くないとされる。カルナック神殿にはトトメス三世の銘とともに座すモント・スフィンクスの姿が確認できる。
他にファラオの生き写したる守護種スフィンクス・シェプスアンクがおり、その顔はハトシェプストそのもの。ハトシェプスト葬祭殿の壁画にはハトシェプストが人面の顔をもつスフィンクスとして敵を踏みつけている図が存在する。
「俺のマスターならば、モント程度は扱えるようにならねばな」
そう彼は嘯く。
トトメス三世、即位名
勝利王ジェフティメス。知識の神トートの化身。
四騎士が一騎、バーサーカーの代わりに召喚されたエクストラクラス。
フォーリナーと呼ばれるもの。
「スフィンクス、貴方にとってはたかが威光の一欠片に過ぎずとも、私にとっては3500年……いや古代種たる王種ウェヘムメスウトや、カフラー種ともなれば5000年以上の神代回帰をもつ獣の最高位階、神獣」
神秘はより古い神秘に駆逐される。ユリフィスの分家筋であるハイネ家の魔術刻印は時計塔では貴族と呼ばれても、たかが800年でしかない。
「怖気づくか、魔術師?」
「まさか。私はハイネ家の魔術理論で根源に至る」
「はは。賢者の石を下賜されたければな、努力しろ」
ファラオ、天空神ホルスの玉座を受け継ぐ者、神王。
超高密度のフォトニック結晶体、賢者の石を製造可能なアトラス院はエジプト神話における魔術の祖、女神イシスを源流としている。そして、この少年はトートの加護によってアトラス院の研鑽の果てに既に辿り着いていると言っても過言ではない。
亜種聖杯戦争に参加した理由は、はぐらかされてしまったが、このファラオは苛烈な偉業に比べて寛大であるように感じた。叔母の名を抹消した男には見えない。
「全知者たる俺にとって、この世の全ては一切の区別なく下郎に過ぎない。故にこそ――――全力を尽くせ。森羅万象、有象無象とは違う、“己”があることを神王に証明して見せるがいい」
Fate/Another Labyrinth④
過去と未来。
魔術世界における力の源、神秘というのは科学が発展する度に減少し駆逐されていくものだ。人体構造を模した魔術が科学技術によって席を奪われるのと同じように。
「それでゴルゴーンの呪体は、手に入ったのかい」
「化石の欠片だがね。これで神代回帰の研究が更に進むよ」
パルジファルと相対するのは、まさに正反対とも言える男だ。
クリア・オール。アメリカ出身の魔術師。
彼の使用する魔術基盤は時計塔の、芸術的な魔術師を多く擁立する創造科においても異端とされていたものだ。その存在を知ったパルジファルは身の危険も顧みず、直接会いに行った。
『――――君の本質は、現代魔術科寄りなんじゃないか?』
開口一番に、パルジファルはそう言った。言わざるを得なかった。
「ああ言う男は時計塔では終ぞ見なかったね」
「噂のロード・エルメロイ二世には結局、会ったのか?」
「いいや。彼の鑑識の才能は知っているが、僕の魔術には残念ながら役に立たない。そもそも魔術的視点というものが根本的に意味がない。ロード・エルメロイ二世は魔術行使の能力がない魔術師だ」
「あー……彼は科学者ではないか」
ロード・エルメロイ二世の現代魔術科にはスマートフォンを使用した魔術を開発しようとしている現代社会に迎合した、先進的発想をもつニュー・エイジが多く在籍しているというが、オール家の魔術、数学魔術は更に毛色が違っていた。
「E = mc2の
「単純的な魔術では君に軍配が上がるが、君はそれ以外がダメな奴だ」
数学魔術。
数と事象の合一に神秘を見出す常に最新の魔術である其れは、文明の代名詞そのものであった。文字すら口頭での音の数を記号化したものである。音階も元は数学によって概念化されたものだ。
特にクリア・オールの家系に伝わる数秘術ならざる数学魔術は科学文明との相性が魔術にとっては異端とも言えるほどに相性が良い。
科学が世界の在り方を数学によって再定義する度に神秘を増していく。
――――神はこんなにも完全な世界をお創り成された。
雷神の神威たる雷霆を人の手に行き渡らせた偉人の一人、交流電気を発明したニコラ・テスラは数学者である。粒子であり波である光の本質を言い当てた科学者アインシュタインは質量保存の法則をこの世界から見出した。
それは古来から連綿と続く、ピタゴラス式数学魔術の一端ということにできる。
この星に留まらず宇宙の法則を数学化する。その公式がより真に迫れば迫るほど力を増していく。ピタゴラスはそのような魔術基盤をこの世界に刻んだのである。
かつてイアソンが主催したアルゴナウタイの一員、ヘルメスの息子、半神アイタリデスは父ヘルメスに死によって失われることのない記憶力を授かった。そしてトロイア戦争においてエウポルボスとして、そしてギリシャでピタゴラスとして出現した。
まるで万物・物質の流転、事象の変換をテーマとする錬金術を研究するアトラス院の在り方に近しい。錬金術によって転生術式を編み出した者もいるのだから。
「それじゃ、原初のルーン(回帰)は上手く一小節で起動したのか」
「ああ。ルーン文字を刻んで、
「ならこれで、どっちが根源に辿り着くかの勝負になるわけだ」
「君が根源に至るには、科学がビックバンを解明しなければならないだろ? 無理だよ私の圧勝だ」
「真空分極で無から有は生まれるんだぜ」
「その無はそう見えるだけだろ」
「……科学、知ってたのか。論文でも読んでるのか貴族様が」
「どや」
原初の地球ごときでは収まらない、ビックバン後の宇宙を満たしていた原初スープの状態すら人類は再現できる程に発展していった。
それがオール家初代の知的好奇心から編み上げた魔術基盤の希望でもあった。
Fate/Another Labyrinth③
パルジファル・ハイネ・ソフィアリ
魔術回路・質:A+
魔術回路・量:A
魔術回路・編成:正常(起源《回帰》の現出に伴い多少の変調あり)
彼の魂胆。
それは空間時間の召喚であると云ってもいい。
かつて中世にパラケルススやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの天才が一気に現れた、
賢者の石内部で構築された霊子虚構世界限定の空間航法。擬似霊子転移や、疑似霊子変換投射とも呼ばれる。それは電子データではシミュレータでしかないが、こと魔術を扱う者には、仮想的な
偶然にも天文科のロード、アニムスフィア家に伝わる秘奥と同様の理論ではある。だがいつかの未来で地球の魂を複写した疑似地球環境モデル・カルデアスではなく、賢者の石を使用しているため過去改変などの人類史への介入などは到底不可能。
その霊子虚構世界上での歴史改変は、しょせん演算上だ。だが根源の渦は万象に繋がるもの。究極美でも、人体でも、仮想上でも繋がれば至れる。
理論上は可能。
問題は、それを再現できるかというもの。
根源の渦に至るには神代の環境再現が必須。
真に迫らなければ、扉は開かれない。真を造らなければそもそも扉は生まれない。
自分を神代に迎え入れる縁がいる。
神代の編成を再現するための膨大な燃料がいる。
そもそも神代を演算できるアトラス院に匹敵する、高密度の賢者の石を製造できる技術がいる――いや、これは一応後回しでいい。かの
自身のレイシフト時の意味消失から保護する魔術礼装の開発がいる。これに関しては専門分野だ。
神代を再現――アトラス院風に言うならば再演――する研究の副産物として造られたのが私の魔術礼装。
かつて北欧で使用されたという神霊や英霊(一介の魔術師ができるのは英霊までであろう)の振るう原初のルーンを召喚する。
これは
しかし私の起源《回帰》という魔術特性による大幅なショートカットで、実戦的と言える一小節レベルには成立した。
「私は、戦える、はずだ…………っ」
地中海はギリシャ。飛行機の中で、冷や汗で滲む手のひらをぐっと握る。